AIでラフを作って図版の制作指示をしたいと考えている人へ

図版制作のラフは、完成品に近い画像を作る作業ではありません。依頼者が「この図で何を説明したいか」を制作側へ渡すためのものです。どこに何を置くか、何と何を矢印で結ぶか、どこを大きく見せるかが分かれば、丸と線だけでもラフとして成立します。

逆に、画像生成AIで完成品らしい画像を作り、それだけをラフとして渡されるのは、制作側にとって正直なところ迷惑です。画像はきれいでも、どこまでが依頼者の指示で、どこからがAIの付け足した内容なのか分からず、確認する仕事が増えるからです。

AI画像は、指示していないものまで勝手に完成させる

たとえば「機械の内部を矢印で示す」と入力すれば、AIはそれらしい部品、配線、ボルト、文字らしき模様まで補って画像にします。しかし、その部品が実物にあるのか、矢印の方向が正しいのか、依頼者が見せたい構造なのかは分かりません。

制作側は、画像にあるものを一つずつ見て「これは必要ですか」「この形で合っていますか」と確認することになります。依頼者自身も、AIが入れた細部まで把握していないことがあります。ラフを作るためにAIを使ったはずが、ラフの内容を確定する作業が新たに発生します。

制作側が知りたいのは、依頼者が決めた配置と関係

手描きラフなら、依頼者が描いた丸、四角、矢印には少なくとも本人の意図があります。絵として上手でなくても、「左に機械、右に作業員」「この部分だけ断面」「液体は下から上へ流れる」という判断を読み取れます。

図版イラスト制作所では、落書きレベルの「マルチョン」で構いませんとご案内しています。紙へ描いてスマートフォンで撮影した画像で十分です。制作側が清書するので、線をまっすぐ引いたり、色をきれいに塗ったりする必要はありません。

手描きラフと正確な資料を組み合わせる

ラフに正確な製品形状や人体構造まで描く必要はありません。配置と関係は手描きラフで示し、正しい形は写真、設計資料、研究資料、既存図版などで示します。図の中へ入れる名称と数値は、コピーできる文字原稿でも渡してください。

この三つを分ければ、制作側は「どう見せたいか」「何を正しく描くか」「何と表記するか」を区別できます。AI画像一枚へ全部を混ぜるより、指示の確認が早くなります。

どうしてもAI画像を渡すなら、採用する箇所を書き込む

AI画像を構図の候補として見せたい場合は、採用したい箇所へ丸や矢印を書き込んでください。「人物と機械の位置だけ参考」「背景と部品の形は無視」「色は参考にしない」のように、使う部分と使わない部分を明記します。

AIで完成品を作ってから、それに似せて描かせる必要はありません。図版のラフに必要なのは画力ではなく、依頼者自身の判断です。簡単な手描きラフの方が、その判断をそのまま制作側へ渡せます。

関連ページ