図版のトレース・描き起こし。スキャン画像と編集できるデータの違い

古い教材の図版や紙にしか残っていない図を、改訂版に使いたい場合があります。スキャンした画像をそのまま載せる方法と、Illustratorなどで線や文字を描き起こす方法では、できることが違います。元の図をどのように使いたいかによって、必要な作業が変わります。

スキャンは紙面を画像にする作業

スキャンすると、線、文字、紙の汚れなどが、1枚の画像になります。図の内容を変えず、同じ程度の大きさで掲載できるなら、画像を整えて使える場合があります。

一方、名称だけを打ち替えたい、線を動かしたい、配色を変えたいときは、画像の中でその部分を修正することになります。文字や図形がそれぞれ独立した部品として残っているわけではありません。

また、小さな印刷図をスキャンした画像では、細い線や小さい文字が十分に読み取れないことがあります。高い解像度で取り込んでも、原稿そのものにない細部が正しく復元されるわけではありません。

描き起こすと、線・図形・文字を分けて作れる

Illustratorで描き起こす場合は、元の図を見ながら線や図形を作り、文字を入力します。画像をそのまま保存し直す作業とは異なり、形や文字を編集できるデータへ作り直す方法です。

元の図の内容を保ちながら、線の太さや文字の大きさを紙面に合わせて整えることもできます。図の一部が不鮮明な場合は、正しい名称や形がわかる別の資料が必要になります。読めない部分を推測で埋めると、元と違う図になってしまいます。

下は、当所がIllustratorで制作した教材図版の例です。グラフ、表、チャートなども、線と文字を組み合わせたデータで制作しています。

Illustratorで制作した化学教材のグラフ・表・チャートの例。
Illustratorで制作した化学教材のグラフ・表・チャートの例。

描き起こしの作業量は、元の素材と仕上げる仕様を確認して判断します。

グラフは、見えている線をなぞるだけでは済まない場合がある

グラフの線を描き起こす場合でも、軸の目盛りや単位、数値が読み取れる必要があります。形だけを似せても、数値との対応がずれていれば、元の内容を再現したグラフにはなりません。

元の数値データがある場合は、画像をなぞる方法とは別に、数値をもとに作る方法を検討できます。改訂で数値が変わるグラフなら、古い形を再現することと、更新後のグラフを作ることを分けて考えます。

図中の名称や注記を変更する場合も、元の図と変更後の原稿を照合します。元と同じにする箇所と、改訂する箇所が混ざった図では、両方を確認する作業が必要です。

元の図と同じにするか、掲載先に合わせて整えるか

図の内容は同じでも、掲載サイズや印刷色数が変われば、文字や線の調整が必要になる場合があります。古い紙面の図を、そのまま小さな画面に載せても読みやすいとは限りません。

また、既存図版を使える条件は、依頼者側で確認していただきます。描き起こしをすれば、元の図の使用条件を確認しなくてよくなるわけではありません。

図版のデータ化や修正をご相談いただく際は、まず元の素材を確認し、スキャン画像の調整で対応するか、新たに描く必要があるかを判断します。編集できる元データが残っている場合は、そのデータからの修正も検討できます。

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